イーサリアムをエーテリウムと呼びたいブログ

Ether ってなんて呼んでますか?イーサですか?私はエーテルと呼びたいです。カッコいいから!

「それがぼくには楽しかったから」の感想と Ethereum

前回、TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したかを買ったとお話しましたが実はまだ読めてません。大抵のビジネス書って大体最初の方に言いたいことが書いてあるので、最初の方だけ読むともう理解した気になってもう読む気しなくなりませんか?この本は信頼の重要性について432ページに渡って書いていて、信頼の対象は移ろいゆくけど信頼という概念は変わらないし、信頼は大切みたいな話です。多分。自分が注目したのは後半に書かれているビットコインブロックチェーンの部分。ここには Ethereum やヴィタリクさんの生い立ちの事、Hyperledger の事も書かれていてこの部分だけでも読む価値はありました。(そもそもなんでこの本買ったんだろうか全く記憶が無い…もう読まないと思う…。)

それで、ここを読んでいて私の尊敬するリーナストーバルズが伝記的な本を出してたなと思い出して、それがぼくには楽しかったからを買ってみました。今回はその感想になります。

本の生まれた時代的な背景

この本は2001年頃に出版されたものです。今から大雑把に20年前位ですね。本はリーナスがある程度成功したことを意味していると思うのですが、ところがその時代 Linux は日本ではそれほど受け入れられていた訳ではありませんでした。日経Linux だとか、Linux Magazine だとか専門誌が技術者やオタクの間で流行っていたくらいで、LinuxApache を入れて Web サーバーとして使う?なんだそりゃ?って時代ですね。就職活動で Linux の話をしても、Linux ?ああ組み込みで使うやつねとか、一応 Linux は使ってるけど案件そんなに無いよってそういう時代。今でこそ Linux は大成功したと胸を張って言えますが、まだその当時は未知数でした。

リーナス トーバルズって?

リーナス トーバルズは正しくはリーナス・ベネディクト・トーバルズ(Linus Benedict Torvalds)です。トーバルズには雷神トールの土地って意味があるそうです。

ja.wikipedia.org

Wikipedia に大体書いてあることが書かれているのですが、本書はリーナス視点で生い立ちや他のOSの事をどう思っていたのか書かれたものです。大体事実に基づいて書いてあるとは思うのですが、共著者のデビッド・ダイヤモンドが脚色を加えている可能性はありそうです。Wikipedia では、Microsoft(Windows)、Apple(Mac OS X)、Sun(Solaris OS)に対して辛辣な批判をしたとあるのですが、本書ではMicrosoftに対しては意識はしていても、それほど批判的なことは書かれていないです。

オープンソース運動に大きな影響を与えた人物の一人で、私の尊敬している人物です。ビルゲイツやスティージョブズも憧れの人物ですが、私はリーナスの方がずっと、もっと好きです。この本読んで改めて確認できました。

リーナスは経営者というより、開発者、技術者、研究者としてリーダーとして活躍した英雄(Hero)って感じですね。276ページこんな内容があります。

ー人のファンはマイクのところまで歩いていくと、「リーナス、あんたはぼくのヒーローだ」とだけ、大きな声で言った。それに対してリーナスは、同じせりふを100万回も聞き、同じ返答を100万回もしてきたかのように、こういった―――「ありがとう」

本当にリーナスって英雄なんですよね。Microsoft はかつて悪の帝国だなんて言われていて、今でははそうでも無いけれど、社内ではリーナスの写真にダーツを立てて目の敵にしてった位オープンソースの敵だったわけですけど、今じゃ Windows Subsystem for Linux(WSL)を Windows に導入させたくらいの偉業を成し遂げた英雄なんですよ。昔の Microsoft だったらあり得ないことです。

リーナスは、数学の天才で、コンピュータ好きで、自由を愛するオタクです。彼の好きな自由は第10章の「押し付けるな!」から良く理解できます。この章はリーナスとフリーソフトウェア運動の指導者リチャード・ストールマン(RMS)との争いの話です。RMSが他者にフリーソフトウェアという思想を押し付けることをかなり強く批判しています。

以前、オープンソースソフトウェアとフリーソフトウェアの違いについて説明しましたが、フリーソフトウェアは自由の意味が強すぎて極端過ぎるというか、企業ではちょっと受け入れがたい思想になっています。GPL にしても感染性があって、これを一部の成果を秘匿したい企業からしたらこまる訳ですけれど、RMS はそれを強要したんですね。それでリーナスはかなり腹が立ったらしくて、Linux 自体は GPL なんだけどそれを他人(他のプロジェクト)に押し付けるなと。Microsoft(Windows)、Apple(Mac OS X)に対しては本書の範囲では比較的落ち着いた対応なんですが、RMS に対しては明らかな怒気を感じました。

RMS ってちょっとビットコイナーみたいじゃないですか?自由を標榜するけれど他人をそれを押し付ける感じが。本当はビットコイナーが欲しいのは自由じゃなくて権力って感じがしませんか?

Ethereum に通じるもの

この本を読もうとした理由の一つとして、私は Linux と Ethereum が似ているのではないかということで、歴史は繰り返す、未来を知るには歴史をという意味もあります。

やはり、リーナスとヴィタリクさん、Linux と Ethereum はあまりにも似ています。生い立ちだったり、思想だったり、開発の進め方だったり、なにからなにまで似てると私は思いました。結構、その、今の Ethereum を取り巻く状況と昔の Linux を取り巻く状況って結構色々な意味で似てます。Linux 以外にもたくさんの OS があったというのは Ethereum 意外にもたくさんのライバルがいるってこと、クレイグっていう可哀そうなガンを患った少年がいたってのはちょっと笑えました。(偶然にしても歴史は繰り返すって感じがしたから)

まとめ

技術書ではないので、一般の方も楽しめると思います。OS に関する専門用語は出てきますが、なるべく最小限の説明で難しくならないように配慮されてますので、非技術者系の方にも安心です。もちろん知っていた方がより楽しめます。モノリシックカーネルvsマイクロカーネルは今の分散vs集中論争みたいで面白いです。リーダー論みたいな話もあるので、開発者でリーダーやってる人にとっては指針となるかもしれません。ビジネス書としても役に立つかも。

電子書籍版は無いので Amazon で中古を買うか図書館で借りるしかありませんが、読んで損は無いと思います。ところどころにリーナスジョークが入っていてクスリと笑えます。ヴィタリクさんも結構ジョーク言いますよね。二人ともサービス精神がある気がします。

ヴィタリクさんと Ethereum が今後どうなるか本当に未知数ですけれど、ヴィタリクさんが英雄といわれる日がいつか来るのではないかと期待しています。